8.NOV.’19


11月8日。木をただひたすらに伐るばかりで、一本たりとも燃やせなかった先週の鬱憤を晴らすべく、今季初めて自宅のストーブを点ける。
・・・とは言っても、実のところコレは疑似炎揺らめく電気式の温風ストーブ、言わば薪ストーブのニセモノなのだが。幼少期から並々ならぬ憧れを抱いていたとはいえ、都心暮らしの筆者にとって薪ストーブなど夢のまた夢。結局今なお“ それ風 ”のヤツで気を紛らわしているのである。

そもそも、火の無い家など理想からは程遠い。それが暖炉であれ囲炉裏であれ、『 家 』の要とは大切な人達と囲む火そのものだと思っている。


ここに一葉の写真がある。旧いAMAレース公式プログラムの裏表紙に掲載された、懐かしのアメリカ煙草の広告。マッチョなアングロ・サクソンが半裸で斧を振るい、原生林の立木を勇ましく伐り倒している。これこそが男の中の男だろ?と、作り手の価値観を誌面越しにグイグイと押し付けてくる。しかも、それに少なからず同意してしまう自分も居るのだからタチが悪い。
男が木を伐るのは、自らの手で建てる湖畔の小屋の為か、それとも来冬に向けての備えなのか。何れにせよ、そこには間違いなく薪ストーブが在るだろう。自ら割った薪を火にくべ、暖をとるそのストーブの上で夕食を温める。そう、ベンジャミン・フランクリンが発明したと今日に伝わる薪ストーブは自給自足の精神そのもの、フロンティアスピリットの具現に他ならないのだ。


とりわけ、林檎と蜂蜜の某カレーを即座に想起させる“ バーモント ”のロマンチックな響きはもとより、ニューイングランド建築様式の窓装飾をそのデザインに取り入れた優美な佇まい、こと密閉型の薪ストーブに関して言えば、バーモントキャスティングス以外の選択肢は考えにくい・・・ 個人的には。


その筆者憧れのバーモントキャスティングス社が、かつて電気式ストーブを製造していた時期がある。同社の薪ストーブよろしく美しく鉄で鋳込まれたそれは、およそ温風ストーブには似つかわしくない50kg!もの重量を誇っていた。
今も我が家に鎮座するのが絶版久しいそれで、諸事情あって電圧120Vの北米仕様並行輸入品と、100V−50/60Hz規格の日本国内仕様の2台が揃い踏みしている。ただ、部屋の一角にそれ単体で据え置いてもやや唐突な感が否めないので、仕事絡みで発生した様々な建築端材・・・磁器タイル、ナラ無垢材、鋼板、デュポンのカウンター、等々を適当に寄せ集めて自作したマントルピース風の造作家具に格納して運用している。ついこの間まで暑かったというのに、もうそろそろ暖房器具を常用する季節が来るのか。

いつかは湖畔の小さな家、いつかはホンモノの薪ストーブ・・・ そう、多分それこそが男の中の男、なのである。火っていいよな。



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